コーポ啓21号室~偽コンビクトの日々戯言

50歳を過ぎてもまだまだぼやくぜ

人にはそれぞれ事情がある

昨日、ライヴで歌ってもらった「空席」の入ってる真島昌利さんのアルバム「人にはそれぞれ事情がある」は、大学四年時、就職のために自動車学校に通っていた時の僕の愛聴盤だったのです。21歳の時の秋から冬への風景が、このアルバムをかけると綺麗に蘇ってくるのです。何となくその頃のことを思い出して、ちょっとここに書いてみたくなったので。

学校へ来る送迎バスの中で、いつもこのアルバムを聴いてた。秋の枯葉や冬の枯れ木が非常にマッチするアルバムだった。友達はみんなとっくに免許を取り終わっていて、4年の末期になって行くような人は僕だけだったので、特に周りの人と会話もなく、いつも窓から外を見ながらカセットテープ(懐かしい!)を回していたのだよ。自動車学校でもいつも一人。ヤンキーの子と仲良くなっただけ。そいつも僕が仮免取得でモタモタしてる頃に一気に僕を追い越して卒業していった。18歳の男の子にとって、免許は魔法のチケットだものな。僕にはしがらみの受け入れ免状のように思えるよ、なんて思ったりして時間を潰してた。

二月に卒業検定を受けた時、一人のおばさんが僕に話し掛けてきた。10月に入会した時に一緒に説明を聞いてたおばさんで、向こうが僕の顔を覚えていたらしいのだ。卒検まで丸々5ヶ月もかかってた。僕でさえ丸二ヶ月休んでたから三ヶ月ほどだったのに。相当苦労したらしい。おばさんは受かって僕は落ちた。おばさんは別れ際に一言僕に言った。
「それでもあなたはO先生に当たってないからまだ幸せなのよ」
そう、僕はこの学校最強最悪と噂されたO先生に一回も当たっていなかったのだ。俺はまだラッキーなんだ。そう自分に言い聞かせて二回目は不退転の覚悟で試験を受け、受かった。何とか就職に間に合ったのだ。泣きそうだった。

それでも、僕にハンコを捺さなかった教官は、名前を今でもソラで言えるほど恨めしく思っている。中でも、車に乗ってる一時間いっぱい
「最近の大学生は親からたくさんカネ貰って自動車学校へ来たりとか甘えやがって」
と僕に説教をくれてハンコも捺さなかった荒井。俺は今でもオマエを許さないぞ。そういう説教は相手を見てから言いやがれってんだ。底辺の貧乏学生だった俺にそういうことを言うなってんだ。今でも人生で二度と行きたくない場所、といったら自動車学校だ。

そんなことを思うのです。「ロマンス」という曲が今でも大好きです。