コーポ啓21号室~偽コンビクトの日々戯言

50歳を過ぎてもまだまだぼやくぜ

月の鼠

月に雲がかかってて、きれいなんだけど、妖しい感じ。

いろんなこと、忘れてしまってるけどね。嫌になるくらい忘れられないことってものそりゃあるわけでね。後悔してるっつうのともちょっと違う感じなんだけど、はやく奥深くに沈んでくれねぇかなぁっていう感じ。僕のイメージでは、記憶っていろんな大きさの玉なんだ。それが少しずつ底なしの沼に沈んでいく感じ。どんどん沈んでいくとそのうち見えなくなって、あるのかないのかもわからなくなるような。でも、なんかの拍子にその玉が浮かび上がってくることがあるんだ。でも、楽しいことや嬉しいことの玉はなかなか浮かび上がってこなくて、浮かび上がってくるのはいつだって無理矢理沈めた玉なんだな。

矢口高雄の「ボクの手塚治虫」という本を昨日読んでたんだけど、その中で学校の先生が高雄少年にこんな感じのことを言う。

「やがて君たちは大人になるだろう。そして星空を見上げることがあるだろう。だがそんなときの星空は、たいてい悲しい時だったり……何かに行き詰まってしょんぼり見上げることが多い」

あぁ……。人間ってのは、何十年たってもいつの時代でも大して変わんないものなのだな、と思った。星の名前なんてだいぶ忘れてしまっていて、月ばかり見上げてるのだけど。