コーポ啓21号室~偽コンビクトの日々戯言

50歳を過ぎてもまだまだぼやくぜ

20年前のこと その四

でも、あの夜のあの状態を僕は人には見せられなかったよ、多分。後にも先にもあそこまで腑抜けになったことはなかったと思う。魂抜かれたっていうか。誰と話しても言葉がうまく耳から入ってこないんだ。そういう意味で、一人で行ってよかった、と後から思ったもんだ。自分があんな状態になってしまうなんて思いもしなかったもんね。茨島には申し訳ないけど、一人で行ったのはきっと正解だったんだと思ってる。実はあの時、部活の後輩の女の子たちから一緒に行かないか誘われたりしてたんだけど、なんか断っちゃったんだよなぁ。きっとあれも正解だったのだと思うことにしてる。思うことにしてるんだってば。

テストはもう散々だった。でも、本当に気にもならなかったね、そん時は。もうスゲースゲーって。それだけ。あの日からきっと僕はいろいろ変わった気がする。うまく言えないけど、もっと生きることに真面目になろうと思うようになったんじゃなかったかな。真面目に生きるってことじゃなくてね。何でも知りたいし、なんでも意見を持ちたいし、もっと気持ちよくやろうと思った。そういう心理のことをヒロトはよくインタビューなんかで言ってるね。そういう意味では、きっと僕もロックンロールによって救い上げられた人間の一人なんだと思う。

あれから20年、やっぱりあんまりうまくいってないなぁと思うけど、それでもまぁ何とか生きてるのはきっとあの日の体験が大きいんだなと思ってるんだ。別にブルーハーツがどうとかロックンロールがどうとかいうことじゃなくてさ、あれくらいガーンと感激できたって体験が、生きてることをまんざらでもないと思わせてくれるって感じかな。まぁ、これもあまりうまく言えないけどさ。