コーポ啓21号室~偽コンビクトの日々戯言

50歳を過ぎてもまだまだぼやくぜ

鈴木さん

先日、ブルーハーツの「STICK OUT」を聴き直していた際、いろんなことを思い出してしまって、ちょっと書いてみたくなったので少しだけ書いてみる。

 

このアルバムは私は20歳になる少し前くらいに出て、その次の「DUG OUT」はその半年後くらいに出た。とてもとてもいいアルバムで、この二枚を毎日毎日ヘッドフォンステレオで聴いていた。どこに行くにも聴きながら歩いた。とても寒い冬の夜も、吸い始めたばかりの煙草の煙にまみれながら聴いてた。あの頃、自分を取り巻く環境があまりよくない状態でね、毎日嫌で嫌で。でも、すべて投げ出してしまいたくなるような気持ちを押さえつけなくてはいけなくて。とにかくこの二枚をすがるように聴いてた日々だった。

 

ブルーハーツ最後のツアーとなった凸凹ツアーの花巻に関口と行くことにしたのだが、もう一人鈴木さんという少し年上の人も誘った。鈴木さんはうちのサークルに浅くかかわってた人で、研究室が忙しかったせいか普段はなかなか来ないんだけど、たまーに現れて尺八を少し吹いて雑談して帰っていく人だった。その雑談の中で、僕もブルーハーツが好きなんだよ、って話が出たので誘ってみることにしたのだ。この鈴木さん、「純朴」って言葉一言で表せるような人でね、体が大きくて物静かでいつもニコニコ、いい人オーラがあふれ出ているような人だった。ワタシみたいにひねくれたロック好きではなく、本当に普通の人がたまたまブルーハーツの何曲かを好きになった、って感じだった。出たばかりの「STICK OUT」と「DUG OUT」のCDを貸して、ライブの予習をしてもらったりしてね。CDを返してもらう時に、「聴いたよー。旅人って曲がいいね!」なんてニコッと笑いながら言われたね。こんな純朴な人をバカでかい音で騒ぐロックのライブに連れてって大丈夫なのか、ちょっと不安になったのを覚えている。

 

当日鈴木さんがなかなか現れなくて、関口と彼の研究室まで迎えに行ったっけな。結構忙しそうなのにそんな人を連れ出してよかったのかな、ってそん時は思ったけど、まぁ仕方ないよね。俺達、天下のブルーハーツを見に行くんだぜ!関口の運転するボロボロのブルーバードで花巻市文化会館へゴー!

 

ライブ中、どうしても鈴木さんのことが気になって横目で何度か確認したけど、爆音の中ニコニコしながら手を叩いて楽しそうにしてくれてるのを見てホッとしたのを思い出すよ。こっちはヘッドバンキング全開だったけど。「旅人」もやってくれたね、ブルーハーツは。


Blue hearts - 旅人

 

当日のセットリストがみられるサイトがあった。いい世の中になったものです。 

 https://www.livefans.jp/events/412764

 

終わった後、三人で焼肉屋に行ってたらふく食べた後盛岡まで帰ったなぁ。それ以外のことはあまり思い出せないんだけど、なんかただただ楽しい夜を過ごしたような気がするよ。今思えばああいうのって青春の1コマって言っていい夜だよねぇ。

 

それからしばらく経って、僕も大学を卒業して実家へ帰ることとなった。卒業式の日か追い出しコンパの日か忘れたけど、「あの日はとても楽しかったですね!またいつか行けたらいいですね」ってがっちり握手したのを覚えてる。そのあとすぐにブルーハーツは解散しちゃったし、鈴木さんとも一度も会うことはなかったのは残念だけど。まぁその後のハイロウズクロマニヨンズはきっと鈴木さんの好みでは無かったろうし。

今も日本のどこかで元気にされているのだろうか。きっと偉くなってるんだろうなぁ、なんて。なんかどこまでもあのまま素朴なまま偉くなっていてくれれば嬉しいなぁ。一緒にマルパソにカレーを食べに行った時、ワタシは辛いのがあまり得意ではないのでせいぜい2辛くらいなんだけど、鈴木さんは20辛に納豆トッピングしてフウフウ汗かきながら食べてた。そんな姿もなんか和んじゃうんだよなぁ。あの姿はなんか忘れられない。そして、ワタシがカレーにたまに納豆入れるようになったのは間違いなくあの時からだ。美味しいんだよ、これが。ホントいいことを教えてくれてありがとう、鈴木さん。